賃貸の設備が壊れたら誰が修理する?貸主・借主の負担と故障時の対処法

賃貸住宅の設備が故障したとき貸主と借主のどちらが修理するのか疑問を持つ女性のイラスト

賃貸住宅で生活していると、

「エアコンが動かなくなった」

「給湯器からお湯が出ない」

「蛇口から水が漏れている」

「トイレが故障した」

など、備え付けの設備に不具合が起こることがあります。

そんなとき、

「賃貸だから大家さんが全部直してくれるの?」

「自分で壊したわけではないけど、修理代を払うこともある?」

と迷いますよね。

先に結論をお伝えします。

貸主の設備を普通に使用していて、経年劣化や自然故障によって修繕が必要になった場合は、原則として貸主側が必要な修繕を行います。

一方で、

借主の故意・過失や誤った使い方によって故障した場合は、借主側が修理費を負担することがあります。

そしてもう一つ大切なのが、

壊れたからといって、いきなり自分で修理業者を呼ばないことです。

まず設備の状態を確認して、写真や動画などの記録を残し、貸主・管理会社へ連絡してください。

この記事では、

誰が修理するのか

誰が費用を負担するのか

自分で修理してよいのか

貸主側が修理してくれない場合はどうするのか

を、法律上の基本と30年以上住宅の修繕に携わってきた現場目線から分かりやすく解説します。


結論|貸主の設備の自然故障なら原則として貸主側が修繕する

Q.賃貸の設備が普通に使っていて壊れました。自分で修理代を払いますか?

原則として、貸主側です。

民法第606条では、賃貸物を使用するために必要な修繕は、原則として貸主が行うこととされています。

ただし、

借主側の責任によって修繕が必要になった場合は別です。

例えば、

長年使用されている給湯器が、普通に使っていて故障した。

備え付けのエアコンが経年劣化で動かなくなった。

給水設備の劣化によって突然水漏れした。

こうした場合は、まず貸主・管理会社へ連絡して修繕を依頼するのが基本です。

一方で、

物をぶつけて設備を壊した。

本来とは違う使い方をして故障させた。

異物を流してトイレを詰まらせた。

など、借主側に原因があれば費用負担は変わります。

つまり、

「貸主の設備だから必ず貸主負担」ではありません。

見るべきなのは、

何が壊れたかより、なぜ壊れたのか

です。


まず確認|それは本当に「貸主の設備」?

設備が壊れたとき、最初に確認したいことがあります。

それは、

その設備が賃貸住宅に備え付けられた「貸主側の設備」なのか

ということです。

例えば、

エアコン。

ガスコンロ。

温水洗浄便座。

照明器具。

などは、物件によって扱いが違います。

貸主が設備として設置している場合もあれば、自分で購入して取り付けたものもあります。

また、以前の入居者が置いていったものなど、契約上「設備」として扱われていない場合もあります。

そのため、

「入居したときから部屋にあった=必ず貸主が修理する設備」

とは限りません。

まず、

  • 賃貸借契約書
  • 重要事項説明書
  • 設備表・付帯設備表
  • 特約

などを確認してください。

分からない場合は、

「この設備は貸主側の付帯設備として修理対象になりますか?」

と管理会社へ確認すると分かりやすいです。


貸主側の修繕になることが多いケース

代表的なのは、

通常使用による経年劣化や自然故障

です。

エアコンが経年劣化で動かなくなった

貸主の備え付けエアコンを普通に使用していて故障したのであれば、まず貸主側へ修繕を依頼します。

給湯器が突然故障した

借主の使い方に問題がなく、設備そのものの経年劣化や故障であれば、原則として貸主側の修繕を考えます。

水栓や配管設備が劣化して水漏れした

配管や設備そのものの劣化による水漏れなら、まず貸主・管理会社へ連絡します。

蛇口のパッキンなど軽微な修繕については、契約内容によって扱いが異なることがあります。

トイレ設備が経年故障した

タンク内部の部品などが自然に故障した場合も、借主が原因とは限りません。

ここでも重要なのは、

「何の設備が壊れたか」ではなく「なぜ壊れたか」

がポイントとなります。


借主負担になることがあるケース

Q.貸主の設備なら、何を壊しても大家さんが修理代を払いますか?

いいえ。

借主の故意・過失などによって修理が必要になった場合は、借主負担になることがあります。

例えば、

  • 設備へ物をぶつけて破損した
  • 誤った使用方法によって故障させた
  • 異物を流してトイレを詰まらせた
  • 無理に部品を動かして破損した
  • 自分で分解して状態を悪化させた

などです。

ここは、

設備の所有者が誰なのか

だけでは決まりません。

故障の原因がどこにあるのか

を確認する必要があります。

トイレの詰まりや水漏れは、設備側の故障なのか借主の使い方が原因なのかで負担が分かれます。具体例はこちらで詳しく解説しています。

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「壊れた原因」と「放置して広がった損害」は別に考える

これは善管注意義務とも関係します。

例えば、

古くなった給湯管から水漏れした。

この最初の故障原因は、借主ではないかもしれません。

しかし、

水漏れに気付いていたのに連絡せず放置し、

床や壁、下地まで傷めてしまった。

この場合は、

設備が壊れた原因

と、

その後、被害を広げた責任

を分けて考える必要があります。

つまり、

「大家さんの設備だから自分には関係ない」

と放置するのは避けてください。

設備の故障そのものが借主の責任でなくても、異常に気付いてからの対応によって話が変わることがあります。

設備の故障そのものと、発見後に放置して広がった損害は別に考えます。善管注意義務についてはこちらで詳しく解説しています。

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設備が壊れたら、まずこの4つをする

設備の異常に気付いたら、基本は次の順番です。

① 使用を止める

異音。

焦げ臭い。

水漏れ。

異常な発熱。

などがある場合は、無理に使い続けないでください。

感電、火災、ガスなど危険が考えられる場合は、安全を最優先にします。

② 写真・動画を残す

故障箇所だけでなく、

  • 設備全体
  • 型番
  • エラー表示
  • 水漏れしている場所
  • 周囲の被害

なども残しておくと、管理会社や修理業者へ説明しやすくなります。

③ 貸主・管理会社へ連絡する

伝える内容は、

「何が」「いつから」「どのような状態なのか」

で十分です。

自分で原因を断定する必要はありません。

④ 修理方法の指示を確認する

管理会社が指定している修理会社がある場合もあります。

勝手に業者を手配する前に、

「こちらで業者を呼んでもよいですか?」

と確認してください。

設備の異常を見つけたときは、

無理に直そうとするより、まず状態を記録して連絡する

と覚えておくとよいでしょう。

賃貸設備が故障したときの使用停止・記録・管理会社への連絡・修理方法確認の4ステップ

自分で業者を呼んで修理してもいい?

Q.管理会社につながりません。自分で修理業者を呼んでもいいですか?

勝手に修理するのは、原則としておすすめしません。

ただし、法律上まったく修繕できないわけではありません。

民法第607条の2では、賃貸物に修繕が必要な場合に、

貸主へ知らせた、または貸主が修繕の必要を知っているにもかかわらず、相当な期間内に必要な修繕をしない場合。

あるいは、

急迫の事情がある場合

には、借主が修繕できる場合があるとされています。

ただし、

「管理会社がすぐ来ないから、好きな業者に好きな工事を頼んでよい」

という意味ではありません。

修理の必要性。

修理範囲。

費用。

業者。

などをめぐり、後から問題になることがあります。

可能な状況であれば、

まず貸主側へ連絡し、その記録を残して修理方法を確認する

ことをおすすめします。


自分で修理代を払ったら返してもらえる?

Q.本来は貸主側が修理する設備を、自分で払って直しました。修理代を請求できますか?

場合によります。

民法第608条では、借主が貸主の負担に属する必要費を支出した場合、貸主へ償還を求めることができるとされています。

ただし実際には、

  • 本当に必要な修理だったのか
  • 貸主負担となる修理だったのか
  • 修理範囲は適切だったのか
  • 費用は妥当だったのか
  • 貸主側へ事前に連絡していたのか

などが問題になることがあります。

そのため、

「あとで請求すればいいから、とりあえず自分で直そう」

とは考えないほうが安全です。

緊急時を除き、まず貸主・管理会社へ連絡してください。


電球やパッキンまで全部大家さんに頼む?

Q.電球交換や蛇口のパッキン交換まで貸主が修理するのですか?

契約内容を確認してください。

賃貸住宅では、軽微な修繕について借主側で行う取り決めになっていることがあります。

国土交通省の賃貸住宅標準契約書でも、軽微な修繕について借主が自ら行える考え方が示されています。

ただし、

賃貸住宅標準契約書は、すべての賃貸住宅にそのまま適用される法律ではありません。

実際に契約した賃貸借契約書の修繕条項を確認してください。

また、

蛇口から水が漏れているからパッキン。

照明がつかないから電球。

と、症状だけで原因を決めつけるのも避けたほうがよいです。

設備本体や配線など、別の原因が隠れている場合もあります。


エアコンが壊れた場合

備え付けのエアコンが普通に使用していて故障した場合は、まず貸主・管理会社へ連絡します。

ここで確認したいのは、

「エアコンが冷えない」という症状だけで故障原因を決めないこと

です。

例えば、

フィルターの汚れ。

リモコンや設定。

ドレン排水。

電気系統。

内部部品。

冷媒関係。

など、考えられる原因はいくつもあります。

借主が通常できる範囲の確認をしても改善しないのであれば、無理に分解せず、貸主側から修理業者を手配してもらうのが基本です。

エアコンの汚れ・故障について、貸主負担と借主負担が分かれるケースはこちらで詳しく解説しています。

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職人目線|修理か交換かは「壊れた=交換」で決めない

設備が壊れたからといって、

必ず新品へ交換する

わけではありません。

逆に、

必ず修理で済む

とも限りません。

現場では、まず症状を確認します。

例えば給湯器なら、

お湯がまったく出ないのか。

温度が安定しないのか。

エラー表示が出ているのか。

水漏れしているのか。

同じ「給湯器が壊れた」でも、症状は違います。

そこから、

どこが故障しているのか

を確認します。

そのうえで、

  • 修理できる故障なのか
  • 部品が残っているのか
  • 設備が何年程度使われているのか
  • 他の部分にも劣化が見られるのか
  • 修理と交換のどちらが現実的なのか

を判断します。

例えば、比較的新しい設備の一部品だけが故障しているなら、部品交換だけで直ることがあります。

一方、かなり古い設備では、一か所を修理しても別の部分が続けて故障することもあります。

だから私は、

「壊れたから交換」ではなく、どこが壊れていて、どこまで直せば正常に使えるのか

を見ることが大切だと思っています。

そして費用負担についても同じです。

設備の名前だけで「貸主」「借主」と決めるのではなく、症状と原因を確認してから判断します。

現場では、

症状
→ 原因
→ 修理できるか
→ 年数・状態
→ 修理か交換か
→ 費用負担

という順番で考えます。

現場の職人が故障した住宅設備の症状や原因、年数を確認して修理か交換かを判断する図

洗面台も同じです。洗面ボウルに傷やひび割れがあっても、ボウルだけ交換できるのか、カウンターや洗面台まで交換が必要なのかは製品によって異なります。詳しくは「 賃貸の洗面台に傷・ひび割れができたら借主負担?修理費と交換の判断」で解説しています。

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貸主・管理会社が修理してくれない場合は?

まず、

連絡した記録を残してください。

電話だけの場合でも、

「○月○日○時頃に、給湯器の故障について連絡した」

など簡単に記録しておきます。

可能であれば、

メール。

管理会社のアプリ。

問い合わせフォーム。

など、後から確認できる方法でも伝えると分かりやすくなります。

そのうえで、

  • いつ修理予定なのか
  • 修理業者を手配済みなのか
  • 応急対応や代替対応があるのか

を確認してください。

必要な修繕なのに貸主側が対応しない場合には、先ほど説明した民法第607条の2によって、借主自身が修繕できる場合もあります。

ただし、自己判断で工事を進める前に、可能な限り貸主側とのやり取りを記録として残しておくことが大切です。


設備が使えない間、家賃は安くなる?

Q.エアコンや給湯器が壊れて使えません。家賃は減額されますか?

場合によります。

民法第611条では、借主の責任ではない理由で賃貸物の一部が使用できなくなった場合、その使用できない部分の割合に応じて賃料が減額されることが定められています。

例えば、

給湯器が故障して長期間お湯が使えない。

備え付けのエアコンが故障し、通常の居住に支障が出ている。

などの場合には、賃料減額が問題になることがあります。

ただし、

「エアコンが壊れたから今月の家賃を自分で○円減らして振り込む」

というように、借主側だけで金額を決めることは避けたほうがよいでしょう。

どの程度使用できなかったのか。

どのくらいの期間続いたのか。

代替手段があったのか。

などを整理し、まず貸主側へ確認してください。


契約書に「設備の修理は借主負担」と書いてある場合は?

Q.契約書に修理費は借主負担と書いてあります。故障した設備は全部自分で払いますか?

その文言だけでは判断できません。

まず、

  • 何の設備を指しているのか
  • どのような修理を指しているのか
  • 軽微な修繕なのか
  • 故障原因は何なのか
  • 特約の内容はどこまで具体的なのか

を確認します。

同じ「修理」という言葉でも、

電球交換のような軽微なものと、

給湯器本体の故障では内容がまったく違います。

「契約書に借主負担と書いてある」

という一文だけで、どんな設備故障でも借主負担になるとは判断しないでください。

契約書の特約を理由に借主負担と言われた場合は、「書いてある=すべて有効」ではありません。特約の確認ポイントはこちらで解説しています。

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NG行動|設備が壊れたときに避けたいこと

「大家さんの設備だから自分には関係ない」と放置する

違います。

設備の修理責任が貸主側であっても、異常を知ったら連絡してください。

放置して被害が広がると、その広がった損害について別の問題になることがあります。

いきなり自分で分解する

おすすめしません。

原因が分からないまま触ると、状態を悪化させることがあります。

自分で業者を呼び、そのまま高額修理をする

原則として、先に貸主・管理会社へ連絡してください。

後から修理内容や費用負担でもめる可能性があります。

「設備が古いから全部貸主負担」と決めつける

それだけでは判断できません。

古い設備でも、借主側の破損や誤った使い方が原因なら話は変わります。

「自分が住んでいる間に壊れたから自分の責任」と思う

違います。

住んでいる期間に壊れたというだけで、借主の責任にはなりません。

故障原因を確認します。


Q&A|賃貸設備の故障

Q.備え付けの給湯器が壊れました。借主負担ですか?

通常使用による自然故障であれば、原則として貸主側の修繕です。

まず貸主・管理会社へ連絡してください。

Q.エアコンが古くて壊れました。自分で買い替えていいですか?

勝手に交換するのはおすすめしません。

貸主の設備なら、まず貸主側へ修繕・交換について確認してください。

Q.電球が切れただけでも大家さんへ連絡しますか?

契約内容を確認してください。

電球などの軽微な交換を借主側で行う取り決めになっている場合があります。

Q.水漏れで今すぐ対応しないと被害が広がりそうです。

まず安全を確保して、貸主・管理会社の緊急連絡先へ連絡してください。

急迫の事情がある場合には、法律上、借主自身が必要な修繕を行える場合もあります。

Q.修理してくれないので家賃を払わなくてもいいですか?

一律に家賃全額を払わなくてよいとは言えません。

設備が使えない程度や期間などによって賃料減額が問題になることはありますが、まず貸主側へ連絡し、対応について確認してください。

Q.故障原因が分かりません。

自分で無理に判断する必要はありません。

症状を記録して貸主・管理会社へ伝え、必要に応じて専門業者に原因を確認してもらいます。


まとめ|設備が壊れたら「勝手に直さず、まず連絡」

賃貸住宅の設備が壊れたとき、

貸主の設備だから必ず貸主負担

でも、

自分が使っていたから必ず借主負担

でもありません。

まず確認したいのは次の点です。

確認すること基本的な考え方
貸主の設備が自然故障した原則として貸主側が必要な修繕を行う
借主の故意・過失で壊した借主負担になることがある
故障原因が分からない自分で決めつけず原因を確認する
異常に気付いた放置せず記録して貸主側へ連絡する
自分で修理したい原則として先に貸主側へ確認する
貸主側が修理してくれない連絡記録を残し、対応方法を確認する

現場では、

設備の名前だけを見て、誰が払うかを決めることはありません。

確認するのは、

症状
→ 原因
→ その後の対応
→ 必要な修理範囲
→ 費用負担

です。

設備が壊れたら、

無理に直さない。

放置しない。

記録する。

連絡する。

まずこの順番で動いてください。

蛇口を閉めてもポタポタ水が続く場合は、すぐにパッキン交換と決めつけず、漏れている場所や水栓の種類を確認する必要があります。具体的な確認手順は「賃貸の蛇口がポタポタ…自分で直していい?」で解説しています。

賃貸の蛇口がポタポタ…自分で直していい?水漏れしたときの確認と管理会社への連絡
賃貸の蛇口を閉めてもポタポタ水が止まらないとき、自分で直してよい?残り水との違い、漏れている場所の確認、パッキン交換の注意点、止水、管理会社への連絡方法、修理費の考え方まで分かりやすく解説します。

参考資料