賃貸のフローリングの傷は借主負担?退去費用・補修範囲と6年ルールを解説 

賃貸住宅のフローリングの傷やへこみが借主負担になるか心配する女性のイラスト

賃貸住宅のフローリングを見て、

「家具を動かしたときに傷を付けてしまった」

「物を落としてへこんでいる」

「こんな小さな傷でも退去費用を請求される?」

と不安になっていませんか。

先に結論をお伝えすると、フローリングに傷やへこみがあるだけで、必ず借主負担になるわけではありません。

重要なのは、

「なぜ傷んだのか」

です。

例えば、

  • 引っ越しや家具移動で付けた深い傷
  • キャスター付き椅子による傷
  • 物を落としてできた傷
  • 不注意で水を放置して生じた変色や膨れ

などは、借主負担になる可能性があります。

一方、

  • 家具を普通に設置したことでできたへこみ・設置跡
  • 日照による色あせ
  • 建物側の雨漏りによる変色
  • 入居時からあった傷

などは、同じようには考えません。

そして借主に原因があったとしても、

「傷がある=部屋のフローリング全部を新品へ張り替えて全額負担」

という意味でもありません。

この記事では、内装・修繕・原状回復の現場に30年以上携わってきた経験も踏まえながら、

フローリングの傷をどこまで借主が負担する可能性があるのか

を順番に解説します。

「そもそも普通に住んで付いた傷まで払うの?」という方は、通常損耗・経年変化と借主負担の基本から確認すると分かりやすくなります。

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結論|フローリングの傷は「原因・程度・補修範囲」で判断する

まず代表例を整理します。

フローリングの状態基本的な考え方
引っ越し作業で付けた引っかき傷借主負担になり得る
物を落としてできた深い傷・へこみ借主負担になり得る
キャスター付き椅子による傷借主負担になり得る
ペットによる引っかき傷借主負担になり得る
不注意による雨の吹き込みで色落ち借主負担になり得る
家具を普通に設置したことによるへこみ・設置跡通常損耗として貸主側が基本
日照による色あせ原則として貸主側
建物側の雨漏りによる変色原則として貸主側
入居前からあった傷借主負担とは限らない

同じ「へこみ」でも、

家具を普通に置いてできたもの

と、

重い物を落としてできたもの

では判断が違います。

つまり、

傷の見た目だけでは負担を決められません。


家具を置いてできたへこみは借主負担?

原則として、普通に家具を設置したことによるへこみ・設置跡まで借主負担とは考えません。

ここは意外に勘違いされやすいところです。

ベッド。

タンス。

食器棚。

ソファ。

など、生活するために家具を置けば、床へ荷重がかかります。

国土交通省の原状回復ガイドラインでも、家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡は通常の使用による損耗の例として整理されています。

ですから、

「家具の跡がある=借主負担」

ではありません。

ただし、家具を引きずって深い傷を付けた場合などは別です。

「置いたことによるへこみ」

と、

「動かしたときに付けた傷」

を分けて考えます。


家具の設置によるフローリングのへこみとキャスター付き椅子による傷の負担判断の違いを示す図

キャスター付き椅子の傷も通常損耗?

いいえ。

ここは家具のへこみとは考え方が違います。

国土交通省ガイドラインでは、キャスター付き椅子などによるフローリングの傷について、通常損耗とはいえず、借主側の負担となる場合が多い例として挙げています。

毎日同じ場所でキャスターを動かしていると、

  • 表面に細かな傷が増える
  • コーティングが傷む
  • 木目表面が削れる
  • 広範囲に傷が広がる

ことがあります。

賃貸住宅でキャスター付き椅子を使う場合は、床保護マットなどを使用しておくと傷を防ぎやすくなります。


物を落としてできた傷・へこみは?

借主負担になる可能性があります。

例えば、

硬い工具。

重い家具。

家電。

重い物。

などを落としてできた傷です。

ただし、

傷がある=張替え

とは限りません。

表面だけの小さな傷なら、リペア補修できることがあります。

一方、

  • 表面材が割れている
  • 深くえぐれている
  • フローリング材そのものが変形している
  • 下地まで影響している

場合は、補修方法が変わります。

ここでも重要なのは、

傷の大きさだけでなく、深さまで見ること

です。


引っ越しや家具移動で付けた傷は?

借主負担になる可能性があります。

国土交通省ガイドラインでも、引っ越し作業などで生じた引っかき傷は、借主側の負担となる例に挙げられています。

例えば、

家具を持ち上げずに引きずった。

大型家電を床の上で滑らせた。

荷物の角を床へ当てた。

といった場合です。

ただし、引っ越し業者が付けた傷であれば、事情は別に確認する必要があります。

まず、

いつ・誰が・どのように付けた傷なのか

を整理してください。


水をこぼして変色・膨れが出たら?

原因と、その後の対応によって判断します。

少量の水をこぼしてすぐ拭き取った程度で、通常は大きな問題にはなりません。

しかし、

水を長時間放置した。

窓を開けたまま雨が吹き込んだ。

濡れていることに気付いていたのに対応しなかった。

などによって、

  • フローリングが変色した
  • 表面が膨れた
  • 板が反った
  • 継ぎ目が浮いた

場合には、借主負担が問題になることがあります。

一方、建物側の雨漏りなど、借主に原因がない水濡れであれば考え方は違います。

ここでも、

「床が濡れた」という結果より、なぜ濡れたのか

を確認します。


ペットによるフローリングの傷は?

借主負担になる可能性があります。

犬や猫による、

  • 爪の引っかき傷
  • 走り回ったことによる傷
  • 尿による変色
  • 臭い
  • 表面材の傷み

などです。

ただし、ペット可物件だからといって、

ペットによるすべての損傷が通常損耗になる

わけではありません。

ペットの場合は床の傷だけでなく、壁・柱・臭い・尿汚れまで一緒に確認する必要があります。詳しくはこちらで解説しています。

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小さな傷でもフローリング全部を張り替える?

必ずしもそうではありません。

国土交通省ガイドラインでは、借主が負担するフローリングの補修範囲について、

原則として㎡単位

としています。

フローリングの一部損傷の部分補修と広範囲損傷による全面張替えの違いを示した図

複数箇所に損傷がある場合には、居室全体となる場合があります。

ここは壁紙と少し違います。

例えば一か所だけ深い傷がある場合、

部分的な補修。

リペア。

一部の床材交換。

などで対応できることがあります。

一方、

傷が部屋中に広がっている。

広範囲に水濡れしている。

多数の床材が傷んでいる。

という場合には、全面張替えが必要になることもあります。

ですから、

「一か所傷がある=部屋全部張替え」

でも、

「一か所だから必ず部分補修」

でもありません。

工事として必要な範囲を確認します。


フローリングは6年で0円になる?

違います。

ここは壁紙やクッションフロアと大きく違います。

一般的なフローリングの部分補修について、国土交通省ガイドラインでは、

経過年数を考慮しない

としています。

壁紙やクッションフロアの6年ルールとフローリング部分補修・全面張替えの経過年数の違いを示す図

つまり、

「6年以上住んだからフローリング補修費は0円」

というルールではありません。

例えば、借主の不注意によって一部分へ深い傷を付け、その部分を補修する必要がある場合。

その部分補修については、クロスのように6年で残存価値1円という計算をそのまま使いません。

「賃貸は何でも6年で0円になる」と思っている方は注意してください。フローリング・クロス・CFでは経過年数の扱いが違います。

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ではフローリングの経過年数は全く関係ない?

いいえ。全面張替えの場合は考え方が変わります。

国土交通省ガイドラインでは、

部分補修の場合
→ 原則として経過年数を考慮しない

一方、

フローリング全体にわたる損傷があり、全体を張り替える場合
→ 建物の耐用年数をもとに経過年数を考慮する

という整理になっています。

つまり、

「フローリングは年数を一切考えない」

でも、

「6年で0円」

でもありません。

部分補修なのか。

全面張替えなのか。

ここで分けて考えます。


木目の床なら全部「フローリング」と考えていい?

いいえ。

ここも非常に重要です。

見た目が木目でも、

  • 木質系のフローリング
  • クッションフロア(CF)
  • 塩ビ系の床材
  • その他の木目調の床材

などがあります。

床材によって、

経過年数の考え方も補修方法も違います。

特にクッションフロアは、国土交通省ガイドラインでは6年で残存価値1円となるよう負担割合を考える床材です。

ですから、

「木目に見えるからフローリング」

と決めつけないでください。

柔らかい木目調の床なら、フローリングではなくクッションフロアかもしれません。CFの6年ルールや傷・へこみはこちらで詳しく解説しています。

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フローリングの補修費はいくら?

傷を見ずに「○円が相場」と決めることはできません。

実際のフローリング補修は状態による差がかなり大きいです。

費用が変わるのは、

  • 傷の数
  • 深さ
  • 面積
  • 床材の種類
  • 木目や色
  • 表面仕上げ
  • リペアで対応できるか
  • 床材交換が必要か
  • 下地まで傷んでいるか
  • 家具移動などの付帯作業

などです。

数cmの表面傷と、

部屋全体に広がった傷。

水によって多数の床材が膨れた状態。

では、同じ「フローリング修理」でも工事内容は全く違います。

ですから、

ネット上の相場だけで高い・安いを判断するより、今回の傷に何の工事が必要なのか

を確認することが大切です。

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退去時にフローリングの請求を受けたら6つ確認する

見積書に、

「フローリング補修」

「フローリング張替え」

と書かれていたら、次を確認してください。

① どの傷なのか

場所を特定します。

② 原因は何か

借主の過失なのか。

通常損耗なのか。

入居前からあった傷なのか。

③ 床材は何か

本当にフローリングなのか。

CFなど別の床材ではないか。

④ どこまで直すのか

部分補修。

一部交換。

全面張替え。

工事範囲を確認します。

⑤ なぜその補修範囲なのか

一か所の傷なのに全面張替えなら、

「全面張替えが必要な理由を教えてください」

と確認して構いません。

⑥ 金額の内訳

  • 数量
  • 単位
  • 材料費
  • 補修費
  • 施工費

などを確認します。

すでにフローリング補修・張替えの見積書が届いている方は、金額だけでなく「原因・範囲・数量・単価」を確認してください。

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退去前に傷を見つけたらどうする?

まずおすすめするのは、

① 写真を撮る

部屋全体。

傷の位置。

傷のアップ。

の3段階で残します。

② 原因を整理する

家具を動かした。

物を落とした。

入居時からあった。

原因不明。

など、分かる範囲で整理します。

③ 入居時写真と比較する

最初からあった傷なら、入居時写真やチェックシートが重要です。

④ 無理に補修しない

退去費用が心配だからと、焦って色を塗ったり補修材を使ったりする必要はありません。

⑤ 見積内容を確認する

退去時に請求されたら、原因・範囲・工法・金額を確認します。

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NG行動|フローリングの傷で避けたいこと

「家具のへこみがあるから全部自分の責任」

違います。

普通に家具を設置したことによるへこみ・設置跡は、通常損耗として考えられる例があります。

「6年以上住んだから補修費は0円」

違います。

フローリングの部分補修には、クロスと同じ6年ルールをそのまま使いません。

「傷が一つあるから部屋全部の張替え費用を払う」

違います。

全面張替えが必要な工事なのか、借主負担範囲はどこまでなのかを確認します。

「木目だからフローリング」

違います。

クッションフロアなど、木目調の別の床材もあります。

「市販の補修材で塗れば分からない」

必ずしもそうではありません。

色だけでなく、木目・艶・凹凸・光の反射まで合わせる必要があります。


自分でフローリングを補修しないほうがいい理由

小さな傷を見ると、

「補修ペンで塗れば大丈夫では?」

と思うかもしれません。

しかしフローリングのリペアは、見た目以上に難しい作業です。

現場では、

  • 木目
  • 光の反射
  • 表面の凹凸
  • 周囲の経年変色

まで見ています。

濃い補修材を入れすぎると、

傷より補修跡のほうが目立つ

こともあります。

また、深い傷へ自己流でパテなどを入れると、後から専門業者が補修するときに一度取り除く必要が生じることもあります。

賃貸では、

「請求を避けるために隠す補修」

より、

状態を記録して適切な補修方法を確認する

ほうが安全です。


職人目線|床の傷は「傷の長さ」だけでは判断しない

職人がフローリングの傷を原因・床材・深さ・範囲・補修方法・下地から判断する図

フローリングの傷を見るとき、私はまず、

「何cmあるか」

だけでは判断しません。

① 原因

引きずったのか。

落としたのか。

水なのか。

家具の設置跡なのか。

② 床材

木質フローリングなのか。

CFなど別の床材なのか。

③ 深さ

表面の傷だけか。

表面材を超えているか。

④ 広がり

一か所なのか。

部屋中なのか。

⑤ 補修方法

リペアで直るのか。

床材交換が必要なのか。

⑥ 下地

床材だけか。

その下まで傷んでいるか。

を確認します。

例えば、

同じ10cmの傷でも、

表面に薄く付いた線傷

と、

重い家具を引きずって表面材まで削れた傷

では補修方法が違います。

また、

一か所だけ深い傷。

部屋全体に無数のキャスター傷。

でも判断は変わります。

だから現場では、

「傷があるか」ではなく「どのように直す必要があるか」

までを総合的に見ます。


補修と張替えは、どちらが正しい?

状態によります。

私は現場で、

「何が何でも部分補修」

とも、

「傷があるから張替え」

とも考えません。

小さな傷ならリペアできることがあります。

ただし、

  • 広範囲に傷がある
  • 水濡れで多数の床材が変形している
  • 床材自体が破損している
  • 部分補修では適切な仕上がりにならない

なら、張替えが合理的なこともあります。

大切なのは、

一番安い工事を選ぶことではなく、必要以上に広げず、きちんと直る方法を選ぶこと

です。


よくある質問|賃貸フローリングの傷

Q.家具を置いてできたへこみは請求されますか?

原則として、それだけで借主負担とは考えません。

普通に家具を設置したことによるへこみ・設置跡は、通常損耗の例として整理されています。

Q.キャスター付き椅子の傷も普通に生活した傷ですよね?

いいえ。

国土交通省ガイドラインでは、キャスター付き椅子などによるフローリング傷は借主側の負担となる場合が多い例に挙げられています。

Q.小さな傷でも部屋全部張替えになりますか?

必ずしもそうではありません。

一か所なら部分補修できる可能性があります。

ただし、損傷範囲や床材によっては広い施工が必要になる場合もあります。

Q.6年以上住んでいます。フローリング補修費は0円ですか?

違います。

フローリングの部分補修には、クロスやCFと同じ6年ルールをそのまま使いません。

Q.全面張替えでも経過年数は考えないのですか?

いいえ。

フローリング全体にわたる損傷で全面張替えをする場合は、建物の耐用年数をもとに経過年数を考慮する考え方が示されています。

Q.見た目が木目ならフローリングですか?

違います。

木目柄のクッションフロアなどもあります。

まず床材を確認してみましょう。

Q.補修ペンで目立たなくしてもいい?

おすすめしません。

補修跡が目立ったり、後の専門補修を難しくしたりすることがあります。


退去立会いでフローリングの傷を指摘されたら

退去立会いで、

「この床は張替えですね」

と言われた場合も、

その場でいきなり、

「分かりました。全部払います」

と判断する必要はありません。

確認するのは、

  • どの傷なのか
  • 原因は何なのか
  • 床材は何なのか
  • 部分補修できるのか
  • なぜ全面張替えなのか
  • どの範囲を借主負担とするのか

です。

そして、

傷が存在することの確認

と、

その費用を借主が負担することへの同意

は分けて考えてください。

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まとめ|フローリングの傷は「原因→床材→範囲」で判断する

賃貸住宅のフローリングに傷やへこみがあっても、

必ず借主負担になるわけではありません。

確認する順番は、

  1. なぜ傷んだのか
  2. 本当にフローリングなのか
  3. 傷の深さ・程度
  4. 一か所か広範囲か
  5. 部分補修できるか
  6. 全面張替えが必要か
  7. 経過年数をどう考えるか
  8. 見積書の内容

です。

特に覚えておいてほしいのは、

家具を普通に置いたへこみと、キャスター傷は同じではない

ということ。

そして、

フローリングの部分補修に「6年で0円」をそのまま当てはめない

ことです。

借主が付けた傷であっても、

借主負担=部屋全部を新品へ張り替えて全額負担

とは限りません。

工事として必要な補修範囲と、借主が負担する範囲を確認してください。

また、退去前に傷を見つけても、焦ってDIY補修する必要はありません。

まず、

写真
→ 原因
→ 床材
→ 損傷範囲
→ 契約・見積書

の順番で確認しましょう。

すでに高額なフローリング張替え費用を請求されている場合は、

フローリング以外も含めて退去費用全体が高いと感じる場合は、原因・補修範囲・見積内訳を順番に確認してください。

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参考資料

この記事では、主に以下の公的資料を参考にしています。

  • 民法第621条「賃借人の原状回復義務」
  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン Q&A」

国土交通省のガイドラインは一般的な判断基準を示したもので、実際の費用負担は契約内容、床材、損傷原因、範囲、修理方法などによって個別に判断する必要があります。

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