賃貸でDIY・工事してもいい?大家さんの許可が必要なケースと原状回復

賃貸住宅で壁に棚を取り付ける前に大家さんへの確認を考える女性のイラスト

賃貸住宅に住んでいると、

「ここに棚があったら便利なのに」

「壁紙を好きな色に変えたい」

「カーテンレールを交換したい」

「壁に手すりを付けたい」

など、少し手を加えたくなることがあります。

最近は「賃貸OK」「貼ってはがせる」などと書かれたDIY商品も多く、

「元に戻せるなら、自分でやってもいいのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

先に結論をお伝えします。

賃貸住宅のDIYは、すべて禁止というわけではありません。

ただし、

壁・床・天井・建具・設備など、借りている住宅そのものに手を加える場合は、契約書を確認し、大家さんや管理会社へ事前に確認するのが基本です。

特に注意したいのが、

「自分では元に戻せると思っていた」

というケースです。

ビスを外しても穴が残る。

粘着シートを剥がしたら壁紙まで剥がれる。

床に貼った材料の糊が残る。

取り付けた部品を外したら下地まで傷んでいる。

現場では、このようなことがあります。

さらに、

大家さんからDIYの許可をもらったからといって、退去時の原状回復まで免除されたとは限りません。

この記事では、

  • どのようなDIYなら比較的問題になりにくいのか
  • どんな工事は大家さん・管理会社へ確認したほうがよいのか
  • 許可をもらうときに何を確認するのか
  • 退去時の原状回復はどう考えるのか
  • 自分で触らないほうがよい工事は何か

を、現場目線から分かりやすく解説します。


結論|賃貸のDIYは「できる・できない」ではなく内容で判断する

Q.賃貸住宅ではDIYをしてはいけませんか?

一律にダメというわけではありません。

賃貸住宅でも、

家具を置く。

置き型の収納を設置する。

建物を傷めない方法で室内を使いやすくする。

など、建物そのものを変更しない範囲で楽しめることはあります。

一方で、

壁に穴を開ける。

棚を固定する。

壁紙を張り替える。

床材を貼る。

設備を交換する。

建具を加工する。

といった行為は、住宅そのものに手を加えることになります。

国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」では、貸主の書面による承諾なく、増築・改築・改造・模様替えなどを行わない形が示されています。

ただし、賃貸住宅標準契約書は法律そのものではなく、賃貸借契約のひな形です。

実際には、

自分が契約している賃貸借契約書の内容を確認すること

が第一です。


まず確認するのは「賃貸だから」ではなく契約書

DIYを始める前に、まず賃貸借契約書を確認してください。

特に、

  • 禁止事項
  • 制限される行為
  • 増改築
  • 改造
  • 模様替え
  • 設備変更
  • 原状回復
  • 特約

などの項目です。

契約によっては、

貸主の承諾が必要

と書かれている場合があります。

また、

「釘やネジの使用禁止」

「壁紙の変更禁止」

「設備の交換禁止」

など、さらに具体的なルールが設けられていることもあります。

契約書だけでは判断できなければ、

「これくらいなら大丈夫だろう」

と自己判断せず、管理会社へ確認してください。

契約書の特約について確認したい方は、「賃貸の原状回復特約はどこまで有効?」も参考にしてください。

賃貸の原状回復特約はどこまで有効?「契約書に書いてある=払う」ではない判断基準
賃貸の原状回復特約はどこまで有効?「契約書に書いてあるから全部借主負担」とは限りません。通常損耗、クリーニング特約、6年ルール、サイン済みの場合など、特約の確認ポイントを国交省ガイドラインと現場目線で解説します。

比較的問題になりにくいDIYでも「絶対大丈夫」とは言えない

建物そのものを加工しないDIYであれば、比較的問題になりにくいと考えられます。

例えば、

  • 置くだけの収納
  • 置き型の家具
  • 既存設備を加工しないインテリア
  • 建物へ固定しない小物

などです。

ただし、

「穴を開けなければ何をしても大丈夫」

という意味ではありません。

例えば突っ張り式の商品でも、長期間強く押し付ければ壁や天井がへこんだり、跡が付くことがあります。

床へ置いた家具でも、荷重や材質によって跡が付くことがあります。

粘着材を使えば、剥がしたときに仕上げ材を傷める可能性があります。

大切なのは、

商品が取り外せるかではなく、借りた住宅を傷めずに使えるか

という視点です。


大家さん・管理会社へ確認してから進めたいDIY

次のようなDIYは、自己判断で進めず、契約を確認したうえで大家さん・管理会社へ相談することをおすすめします。

壁へ釘・ネジ・アンカーを使う

棚。

フック。

テレビ金具。

大型ミラー。

手すり。

などを壁へ固定する工事です。

国土交通省の原状回復ガイドラインでは、画鋲やピンなどの穴と、下地の張替えが必要になるような釘・ネジ穴では考え方が分かれています。

「穴は穴だから全部同じ」ではありません。

手すりについては、壁へ固定してよいかだけでなく、利用する人の安全性や介護保険の住宅改修、大家さんの承諾、退去時の原状回復まで確認する必要があります。

賃貸住宅への手すり設置を検討している方は、「賃貸住宅に手すりを付けてもいい?介護保険・大家さんの許可・原状回復を解説」で詳しく解説しています。

賃貸住宅に手すりを付けてもいい?介護保険・大家さんの許可・原状回復を解説
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壁の穴については、「画鋲・ピン穴は請求される?OKな範囲と原状回復の判断基準」で詳しく解説しています。

画鋲・ピン穴は請求される?OKな範囲と原状回復の判断基準【退去前に知るべき注意点】
賃貸の画鋲やピン穴はどこまでOK?原状回復の基準を国交省ガイドラインに基づいて解説。請求されるケース・されないケース、退去前の確認ポイントや職人目線の注意点までわかりやすく説明します。

壁紙を張り替える・塗装する

既存の壁紙を剥がす。

上から別の壁紙を貼る。

壁を塗装する。

といった工事は、見た目を大きく変更します。

退去時にどうするのかも含め、事前確認が必要です。

床へ材料を貼る

フロアタイル。

クッションフロア。

タイルカーペット。

シート類。

なども、施工方法によっては既存床を傷めることがあります。

特に接着剤や強い粘着材を使用する方法は注意してください。

建具や設備を交換する

ドア。

取っ手。

水栓。

照明器具。

温水洗浄便座。

カーテンレール。

その他の備え付け設備。

交換できそうに見えても、もともと貸主の所有物である可能性があります。

取り外した既存部品を処分してしまうと、元へ戻せなくなることもあります。

賃貸DIYを置くだけのもの・事前確認が必要な工事・自分で触らない工事の3段階で示した図

「賃貸OK」と書いてある商品なら勝手に使っていい?

Q.商品に「賃貸OK」と書いてあります。許可はいりませんか?

それだけでは判断できません。

商品の「賃貸OK」は、

その物件の大家さんが使用を許可したという意味ではありません。

また、

「貼ってはがせる」

「跡が残りにくい」

という商品でも、すべての壁紙や床材で同じ結果になるとは限りません。

下地の種類。

既存材料の劣化。

貼っている期間。

湿気。

日当たり。

施工方法。

などによって結果は変わります。

商品説明だけで判断せず、

自分の契約内容と、実際に施工する場所の状態

を確認してください。


「元に戻せるDIYなら許可はいらない」は違う

Q.退去するときに元へ戻せるなら、勝手にDIYしてもいいですか?

違います。

原状回復できるかどうかと、

工事をしてよいかどうか

は別の問題です。

例えば、

「棚を外せば元に戻る」

と思っていても、取り付け時に壁へネジ穴を開けていれば、その穴は残ります。

「壁紙を剥がせば戻る」

と思っていても、剥がすときに既存クロスや下地を傷めることがあります。

DIYをする前に、

そもそもその工事をしてよいのか

を確認することが先です。


大家さんから許可をもらっても「原状回復なし」とは限らない

ここは非常に大切です。

Q.大家さんにDIYの許可をもらいました。退去するときはそのままでいいですか?

これだけでは判断できません。

DIYすることを許可しただけなのか。

退去時に元へ戻すことまで求めているのか。

そのまま残してよいのか。

費用は誰が負担するのか。

ここまで確認する必要があります。

国土交通省では「DIY型賃貸借」という仕組みについても契約書式例やガイドブックを公開しています。

そこでも、

どのような改修をするのか

だけではなく、

退去時の原状回復をどう扱うのか

まで貸主と借主で合意する考え方が示されています。

つまり、

工事の許可と、退去時の扱いはセットで確認する

ことが大切です。


許可を取るときは「DIYしていいですか?」だけでは足りない

大家さんや管理会社へ確認するときは、

「DIYしたいです」

だけでは内容が分かりません。

少なくとも、

  1. どこを工事するのか
  2. 何を取り付けるのか
  3. 穴を開けるのか
  4. 接着剤などを使用するのか
  5. 誰が施工するのか
  6. 退去時に撤去するのか
  7. 原状回復が必要なのか

を伝えておくと話が分かりやすくなります。

例えば、

「リビングの壁に幅60cm程度の棚を取り付けたい。壁へビスを使用する予定ですが可能でしょうか。退去時には撤去・補修が必要でしょうか」

というように、

工事方法まで具体的に伝える

ことが大切です。

できれば口頭だけではなく、

メール。

管理会社のアプリ。

書面。

など、後から確認できる方法で残しておくと安心です。

賃貸住宅でDIYの許可を取る前に施工方法や退去時の原状回復を確認する7項目の図

工事前の写真も残しておく

DIYの許可をもらった場合でも、施工前の状態を写真で残しておくことをおすすめします。

壁。

床。

建具。

設備。

施工する周辺。

を撮っておきます。

そして施工後も写真を残しておけば、

どこをどう変更したのか

確認しやすくなります。

退去時に元へ戻す必要がある場合にも役立ちます。

入居時や工事前の写真の残し方は、「賃貸の入居時に写真を撮るべき場所は?」も参考にしてください。

賃貸の入居時に写真を撮るべき場所は?退去費用トラブルを防ぐ撮影ポイント
賃貸の入居時に写真を撮るべき場所は?壁・床・天井・水回り・設備など、退去費用トラブルを防ぐ撮影ポイントを解説。全景・位置・アップの撮り方、管理会社への伝え方、写真の保存方法まで現場目線で紹介します。

電気・設備工事は「できそうだから」で触らない

DIY動画などを見ると、

「自分でもできそう」

と思う工事もあります。

しかし、電気工事には資格が必要な作業があります。

コンセントの増設。

専用回路の工事。

電圧の切り替え。

ブレーカー交換。

配線工事。

などは、内容によって電気工事士の資格が必要です。

感電や火災につながる可能性もあるため、

賃貸か持ち家かに関係なく、資格が必要な工事を無資格で行ってはいけません。

また、水道・ガス・住宅設備なども、施工を誤れば漏水や事故につながることがあります。

建物設備へ関わる工事は、

「自分でできそうか」ではなく、「自分で触ってよい工事なのか」

から判断してください。


職人目線|「外せる」と「元に戻せる」は同じではない

現場でDIY跡を見ると、

本人は元に戻せるつもりだったのだろうな

と思うことがあります。

例えば、壁へ貼った材料は簡単に剥がせても、

その下の壁紙まで一緒に剥がれてしまう。

ネジは抜けても、

ボードアンカーの大きな穴が残る。

床に貼った材料は剥がせても、

粘着剤だけ残る。

取り付けた棚は撤去できても、

下地まで補修しなければならない。

ということがあります。

ここで大切なのは、

「取り外せる」=「元の状態へ戻せる」ではない

ということです。

特に壁紙や床材は、表面だけを見ても下地の状態までは分かりません。

材料の種類や年数によっては、

同じ施工方法でも剥がしたときの結果が変わります。

私はDIYそのものを否定するつもりはありません。

自分の暮らしに合わせて部屋を使いやすくすることは、楽しいことでもあります。

ただ賃貸の場合は、

「自分の家ならどうするか」ではなく、「借りている住宅にどこまで手を加えてよいか」

を一度考えてから作業してほしいと思います。

現場の職人がDIY後の壁紙の剥がれ、ネジ穴、床の粘着跡を確認して原状回復できるか判断する図

DIYで付けた傷は退去時にどうなる?

賃貸住宅の原状回復は、

退去するときに新品の状態へ戻すこと

ではありません。

通常の生活で発生した経年変化や通常損耗まで、原則としてすべて借主負担になるわけではありません。

一方で、

借主がDIYによって壁・床・建具などを傷めた場合は、

通常の使用を超える損耗として、原状回復が必要になる可能性があります。

国土交通省の原状回復ガイドラインでも、借主の故意・過失や通常の使用を超える使い方による損耗・毀損は、借主側の原状回復の対象になるという考え方が示されています。

ただし、

傷を付けたから部屋全部を新品にする

という話ではありません。

必要な補修範囲。

施工単位。

材料の経過年数。

契約内容。

などを確認して判断します。

原状回復の基本については、「賃貸の原状回復とは?通常損耗・経年変化と退去費用の基本ルールを解説」で詳しく解説しています。

賃貸の原状回復とは?通常損耗・経年変化と退去費用の基本ルールを解説
賃貸の原状回復とは?入居時の新品状態に戻すことではありません。民法621条と国交省ガイドラインをもとに、通常損耗・経年変化・故意過失の違い、借主負担、6年ルール、特約、退去費用の確認方法を現場目線で解説します。

すでに無断でDIYしてしまった場合は?

Q.大家さんへ確認せず、すでにDIYしてしまいました。どうすればいいですか?

工事内容を確認する必要があります。

まず、

どこを変更したのか。

穴を開けたのか。

既存設備を外したのか。

建物を傷めていないか。

元の部品は残っているか。

を確認してください。

大きな加工や設備変更をしている場合は、

さらに自己判断で工事を重ねず、契約書を確認して管理会社へ相談する

ことをおすすめします。

そして、

「退去するときに自分で直せば分からないだろう」

と考えて、慌てて補修するのもおすすめしません。

補修方法を間違えると、かえって直す範囲を広げてしまうことがあるからです。

原状回復工事を誰が行うのかについても、契約で貸主や指定業者が施工すると定められている場合があります。


NG行動|賃貸DIYで避けたいこと

「賃貸OK」と書かれている商品だから確認せず施工する

おすすめしません。

商品表示と、自分の賃貸借契約は別です。

「元に戻せるから大丈夫」と自己判断する

違います。

施工そのものに承諾が必要な場合があります。

大家さんから許可をもらったので原状回復も不要だと思う

これだけでは判断できません。

退去時の扱いまで確認してください。

取り外した設備や部品を捨てる

おすすめしません。

貸主の所有物であれば、退去時に元へ戻せなくなる可能性があります。

資格が必要な電気工事を自分で行う

いけません。

資格が必要な工事は専門業者へ依頼してください。

失敗したDIYをさらに自己流で隠す

おすすめしません。

補修範囲を広げてしまうことがあります。


Q&A|賃貸住宅のDIY・工事

Q.壁に棚を付けたいのですが、大家さんの許可は必要ですか?

固定方法によります。

壁へビス・ネジ・アンカーなどを使用する場合は、契約書を確認し、事前に大家さん・管理会社へ相談することをおすすめします。

Q.画鋲なら自由に使っていいですか?

契約内容も確認してください。

原状回復ガイドラインでは、下地交換が不要な程度の画鋲・ピン穴と、釘・ネジ穴では扱いが異なります。

ただし、契約で使用方法が決められている場合は、その内容も確認する必要があります。

Q.貼ってはがせる壁紙なら許可はいりませんか?

これだけでは判断できません。

商品が剥がせても、既存壁紙や下地を傷めないとは限りません。

広い範囲へ施工する場合は、事前確認をおすすめします。

Q.大家さんから口頭で「いいですよ」と言われました。大丈夫ですか?

口頭での了承だけでなく、

工事内容と退去時の扱いを、できれば後から確認できる形で残しておく

ことをおすすめします。

Q.DIY型賃貸なら何をしても自由ですか?

違います。

DIY型賃貸でも、どのような工事を行うのか、費用負担、修繕、退去時の原状回復などについて貸主と借主で取り決めることが重要です。

Q.退去するとき、自分でDIY跡を補修してもいいですか?

契約内容によります。

原状回復工事を貸主や指定業者が行うと定められている場合、自分で勝手に施工できるとは限りません。


まとめ|賃貸DIYは「始める前の確認」が一番大切

賃貸住宅のDIYは、

全部ダメ

でも、

元に戻せれば何をしても大丈夫

でもありません。

まず確認するのは、

何をするのか。

建物にどこまで手を加えるのか。

契約ではどうなっているのか。

です。

そして大家さん・管理会社へ確認が必要な工事なら、

工事内容だけでなく、退去時の原状回復まで確認する

ことが大切です。

DIY前に確認したいポイントを整理すると、次のようになります。

確認することポイント
契約書DIY・改造・模様替えなどの制限がないか
工事内容穴・接着剤・加工・設備変更があるか
貸主の承諾必要なら工事前に確認する
原状回復退去時に元へ戻す必要があるか
記録工事前の写真と承諾内容を残す
安全性資格や専門工事が必要ではないか

迷ったときは、

「元へ戻せそうだからやってしまおう」

ではなく、

「借りている住宅だから、先に確認しておこう」

と考えるほうが、後のトラブルを防ぎやすくなります。

DIYは、始めてからより、

始める前の判断が大切です。

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