引っ越しのために冷蔵庫やテレビを動かしたら、
「後ろの壁だけ黒くなっている」
「掃除しても黒ずみが取れない」
「壁紙を張り替える費用を請求されるの?」
と不安になることがあります。
家具や家電を置いている間は壁が見えないため、退去前に初めて気付く方もいるでしょう。
先に結論をお伝えします。
テレビや冷蔵庫を普通に使用したことで後部の壁面に生じた黒ずみ、いわゆる「電気ヤケ」は、原則として借主負担とは考えません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、
テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
は、借主が通常の住まい方・使い方をしていても発生すると考えられるものとして整理されています。
ただし、
家電の後ろが黒い=すべて電気ヤケ
という意味ではありません。
油汚れ。
タバコのヤニ。
カビ。
すす。
実際の熱や電気の異常による焦げ。
など、別の原因で黒く見える場合もあります。
この記事では、
- 冷蔵庫・テレビ裏の電気ヤケは誰の負担か
- 電気ヤケとその他の黒ずみの違い
- 掃除しても落ちない場合はどうするか
- 壁紙の張替え費用を請求されたときの確認方法
- 本当に焦げている場合はどうするか
- 現場では黒ずみのどこを見るのか
を、内装・修繕・原状回復の現場に30年以上携わってきた経験も踏まえて解説します。
結論|冷蔵庫・テレビ裏の電気ヤケは原則として通常損耗
Q.冷蔵庫の後ろの壁が黒くなっています。退去時に払いますか?
通常の使用によって生じた電気ヤケであれば、原則として借主負担とは考えません。
国土交通省の原状回復ガイドラインでは、
テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
を、借主が普通に生活していても発生すると考えられるものとして扱っています。
国土交通省が公開している原状回復のQ&Aでも、
「テレビや冷蔵庫の後ろの黒ずみを掃除してもきれいにならない」
というケースについて、
原則として借主に原状回復費用の支払い義務はない
という考え方が示されています。
つまり、
「自分の冷蔵庫を置いていたから、自分で壁紙を張り替えなければならない」
とは限りません。
民法621条でも、通常の使用・収益によって生じた損耗や経年変化は、借主の原状回復義務から除かれています。
通常損耗と借主負担の基本から確認したい方は、「賃貸の原状回復とは?通常損耗・経年変化と退去費用の基本ルールを解説」も参考にしてください。
賃貸の原状回復とは?通常損耗・経年変化と退去費用の基本ルールを解説賃貸の原状回復とは?入居時の新品状態に戻すことではありません。民法621条と国交省ガイドラインをもとに、通常損耗・経年変化・故意過失の違い、借主負担、6年ルール、特約、退去費用の確認方法を現場目線で解説します。
「電気ヤケ」という名前でも、必ずしも壁が焼けているとは限らない
「電気ヤケ」と聞くと、
電気で壁紙が焼けて黒くなった
ように感じるかもしれません。
ただ、国土交通省のガイドラインでは、テレビや冷蔵庫などの後部壁面に生じる黒ずみを、
「いわゆる電気ヤケ」
と表現しています。
ですから、
黒い=壁紙が実際に燃えたり焦げたりしている
とは考えないでください。
一方で、
コンセントが焦げている。
電源プラグが変色している。
壁紙が炭化している。
焦げた臭いがする。
異常に熱い。
といった状態は別です。
こちらは単なる原状回復の「電気ヤケ」と決めつけず、安全上の異常として確認する必要があります。
家電の後ろが黒ければ全部「電気ヤケ」ではない
ここがこの記事で特に大切なところです。
同じ黒ずみでも、原因は一つではありません。
例えば、
| 黒ずみの状態・原因 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| テレビ・冷蔵庫の通常使用による後部壁面の黒ずみ | 通常損耗として考える |
| キッチンの油・すすが付着した黒ずみ | 清掃状況や原因を確認 |
| タバコのヤニ・臭いを伴う汚れ | 借主負担になる可能性がある |
| 結露などを放置して広がったカビ | 原因とその後の対応を確認 |
| プラグやコンセント周辺の焦げ | 原状回復より先に安全確認 |

つまり、
冷蔵庫の後ろにあるから電気ヤケ
でも、
黒いから借主負担
でもありません。
まず確認したいのは、
どのような原因で黒くなっているのか
です。
冷蔵庫裏の黒ずみはどう考える?
Q.冷蔵庫を動かしたら壁紙が黒くなっていました。借主負担ですか?
通常使用による電気ヤケであれば、原則として借主負担とは考えません。
冷蔵庫は長期間同じ場所へ設置することが多く、裏側を見る機会もほとんどありません。
退去前に冷蔵庫を動かして、
「こんなに黒かったの?」
と初めて気付くこともあります。
それだけで、
掃除を怠った借主の責任
とは判断できません。
ただし、冷蔵庫周辺でも、
油汚れ。
水分。
カビ。
サビ。
など別の原因による汚損があれば、その部分は別に判断します。
特にキッチン近くに設置されている場合は、電気ヤケだけではなく油やすすなどが影響していないかも確認してください。
「キッチンの油汚れは原状回復になる?賃貸の退去費用で借主負担になるケースと判断基準」では、通常使用による汚れと清掃不足によって蓄積した油汚れの違いを詳しく解説しています。
キッチンの油汚れは原状回復になる?賃貸の退去費用で借主負担になるケースと判断基準賃貸のキッチンや換気扇の油汚れは退去時に原状回復費用として請求される?国土交通省のガイドラインをもとに、通常の清掃と借主の手入れ不足による油汚れの違い、借主負担になるケース、退去前の確認ポイントを現場経験のある職人が解説します。
テレビ裏の黒ずみも同じ?
Q.テレビを置いていた壁だけ黒くなっています。
通常使用による電気ヤケであれば、冷蔵庫と同じ考え方です。
国土交通省のガイドラインでも、
テレビ、冷蔵庫等
という形で例示されています。
テレビ台やテレビの位置を変えたときに、
テレビのあった場所だけ色が違って見える。
後ろ側が黒っぽくなっている。
周囲の壁紙との差が目立つ。
ということがあります。
ただし、
タバコを吸っていた。
ストーブなど別の機器も近くにあった。
壁全体が黄ばんでいる。
強い臭いが付いている。
などの場合は、電気ヤケだけで説明できるとは限りません。
「タバコのヤニ汚れはどこまで請求される?クロス張替え費用と負担の考え方」では、ヤニ・臭いによる壁紙の負担について詳しく解説しています。
タバコのヤニ汚れはどこまで請求される?クロス張替え費用と負担の考え方賃貸でタバコのヤニ汚れはどこまで原状回復費用として請求されるのか?クロス張替えの範囲や6年ルール、借主負担になるケースを現場視点で解説。退去時に損しない確認ポイントも紹介します。
掃除しても落ちなければ借主負担になる?
Q.黒ずみを拭いても落ちません。張替え費用を払う必要がありますか?
落ちないという理由だけで借主負担になるわけではありません。
ここは国土交通省のQ&Aでも、かなり分かりやすく整理されています。
テレビや冷蔵庫等の後部壁面の電気ヤケについて、
清掃してもきれいにならない場合でも、原則として借主は原状回復費用を負担する必要はない
という考え方が示されています。
つまり、
掃除で落ちるかどうか
と、
誰が費用を負担するのか
は別の問題です。
通常損耗である電気ヤケなら、
「掃除しても落ちなかったからクロス代は借主負担」
とは単純には考えません。
黒ずみを無理に落とそうとしない
退去前に黒ずみを見つけると、
「何とか消さないと」
と思うかもしれません。
しかし、電気ヤケと思われる黒ずみを、
強い洗剤。
研磨スポンジ。
メラミンスポンジ。
強くこする。
などの方法で無理に落とすのはおすすめしません。
壁紙の表面を削ったり、
艶が変わったり、
柄が薄くなったり、
表面が毛羽立ったり、
別の傷を作ってしまう可能性があります。
もともと通常損耗だった黒ずみに、
借主が清掃で付けた損傷
を追加してしまっては意味がありません。
まずは写真を残し、
通常の拭き掃除で落ちないのであれば、無理に触らないほうがよいケースがあります。
コンセントやプラグが焦げている場合は「電気ヤケ」とは別問題
ここは原状回復とは別に、重要な注意点です。

Q.冷蔵庫の後ろのコンセントまで黒くなっています。普通の電気ヤケですか?
これだけでは判断できません。
特に、
電源プラグが焦げている。
コンセントが変色している。
プラグやコンセントが異常に熱い。
焦げた臭いがする。
コードが傷んでいる。
という場合は、単なる壁紙の電気ヤケとして扱わないでください。
製品評価技術基盤機構(NITE)では、電源プラグに変形・焦げがある場合や、異常に熱くなっている場合には使用を中止するよう注意喚起しています。
また、プラグとコンセントの間にほこりや水分がたまることで、トラッキング現象から発熱・発火につながることもあります。
賃貸住宅でこのような異常を見つけた場合は、そのまま使い続けないでください。
コンセント側に焦げや変色などの異常がある場合は、管理会社・貸主へ連絡します。
家電側の電源プラグやコードに変形・焦げ・異常発熱などがある場合は、メーカーや販売店にも相談してください。
自分でコンセントを分解したり交換したりするのも避けましょう。
電気ヤケで壁紙を張り替えると言われたらどうする?
退去立会いや退去後の見積書で、
「クロス張替え」
「壁紙補修」
などを請求され、その理由が冷蔵庫・テレビ裏の黒ずみだと言われたら、まず内容を確認してください。
① 本当に電気ヤケなのか
通常使用による電気ヤケなのか。
油。
ヤニ。
カビ。
実際の焦げ。
など、別の原因なのかを確認します。
② なぜ借主負担と判断されたのか
電気ヤケであれば、
通常損耗ではなく借主負担とした理由
を確認して構いません。
③ どの範囲を張り替えるのか
一部分なのか。
壁一面なのか。
居室全体なのか。
施工範囲を確認します。
④ 契約書・特約はどうなっているか
通常損耗に関する特約がある場合は、その内容も確認します。
ただし、
契約書に書いてあるだけで、どのような特約でも当然に有効になるわけではありません。
もし借主負担になる汚れなら「6年ルール」も確認する
通常の電気ヤケなら、
そもそも借主負担かどうか
を先に考えます。
そのため、
「壁紙は6年だから電気ヤケも0円」
という順番ではありません。
まず、
通常損耗なのか、借主負担になる汚れなのか
を判断します。
一方で、
タバコのヤニ。
清掃不足による著しい汚れ。
放置して拡大させたカビ。
など、借主負担となる壁紙の損傷については、経過年数を考慮する場面があります。
国土交通省のガイドラインでは、壁紙(クロス)は6年で残存価値1円となるよう負担割合を考える整理が示されています。
ただし、
6年以上住めばどんな退去費用も0円になる
という制度ではありません。
「賃貸の原状回復『6年ルール』とは?6年以上なら退去費用は0円?対象と計算方法を解説」で詳しく整理しています。
賃貸の原状回復「6年ルール」とは?6年以上なら退去費用は0円?対象と計算方法を解説賃貸の原状回復「6年ルール」とは?壁紙・クッションフロアなど6年で残存価値1円となる対象、負担割合の計算例、6年以上住んでも退去費用が必ず0円にならない理由を国交省ガイドラインと職人目線で解説します。
職人目線|黒いかどうかより「どこに、どんなふうに付いているか」を見る
現場で冷蔵庫やテレビを移動したあと、
後ろの壁だけ黒くなっていることはあります。
ただ、私は単純に、
「黒いから電気ヤケ」
というような単純な判断はしません。
見るのは、
家電が置かれていた位置と黒ずみが一致しているか。
家電の後ろだけなのか。
壁全体へ広がっているのか。
油っぽい汚れを伴っていないか。
黄色っぽい変色や臭いがないか。
カビのような点状の汚れではないか。
コンセントやプラグそのものに異常がないか。
というように色々な角度から状況を確認しています。
例えば、
テレビを移動したら、その後ろだけ輪郭に沿うように黒ずんでいる。
冷蔵庫の背面に近い壁だけ色が違っている。
という状態なら、通常使用による電気ヤケを考える手掛かりになります。
一方で、
キッチン全体が油っぽい。
部屋全体にタバコの臭いがある。
壁の角や湿気の多い場所にも黒い点がある。
コンセント周辺に焦げたような変色がある。
なら、別の原因も考えられるでしょう。
ただし、
見た目だけで原因を断定できない場合もあります。
現場では、
「黒いかどうか」より、「なぜそこだけ黒くなっているのか」
を考えて確認することが大切です。

家電を動かしたときは壁だけでなく床も確認する
冷蔵庫やテレビ台を動かしたときは、
壁だけではなく床も一緒に確認しておくとよいでしょう。
重い家電を長期間置いていたことで、
床に脚の跡。
キャスター跡。
へこみ。
変色。
などが見つかることがあります。
ただし、
家電を置いてできた通常の設置跡
と、
引きずって付けた傷
は考え方が違います。
「賃貸の家具跡・床のへこみは請求される?ベッド・タンス・冷蔵庫の設置跡と退去費用」で、家具・家電を置いてできた床の跡を詳しく解説しています。
賃貸の家具跡・床のへこみは請求される?ベッド・タンス・冷蔵庫の設置跡と退去費用賃貸のベッド・タンス・冷蔵庫などの家具跡や床のへこみは借主負担?国交省ガイドラインをもとに、通常損耗になる設置跡と、引きずり傷・キャスター傷・冷蔵庫下のサビなど請求される可能性があるケースを現場目線で解説します。
NG行動|冷蔵庫・テレビ裏が黒かったときに避けたいこと
黒いから全部自分が払うと思い込む
違います。
通常使用による電気ヤケは、原則として通常損耗として考えます。
家電の後ろだから全部電気ヤケと決めつける
違います。
油・ヤニ・カビ・焦げなど、別の原因の可能性もあります。
落ちない黒ずみを強くこする
おすすめしません。
壁紙自体を傷める可能性があります。
6年以上住んだから何でも0円と思う
違います。
まず、そもそも借主負担になる損耗なのかを判断します。
コンセントの焦げまで普通の電気ヤケだと思う
いけません。
プラグやコンセントに焦げ・異常発熱・異臭などがある場合は、安全上の異常として使用を中止し、管理会社などへ連絡してください。
Q&A|冷蔵庫・テレビ裏の黒ずみと原状回復
Q.冷蔵庫裏の壁紙が真っ黒です。借主負担ですか?
黒いというだけでは判断しません。
通常使用による電気ヤケであれば、原則として借主負担とは考えません。
Q.テレビ裏の黒ずみも通常損耗ですか?
通常使用による電気ヤケであれば、原則として通常損耗として考えます。
Q.掃除しても落ちません。壁紙代を払いますか?
落ちないという理由だけで借主負担にはなりません。
国土交通省のQ&Aでも、電気ヤケは清掃してきれいにならない場合でも、借主は原則として原状回復費用を負担する必要はないという考え方が示されています。
Q.冷蔵庫の後ろにカビもあります。電気ヤケと同じですか?
同じとは限りません。
カビの原因や、発生後の換気・清掃・連絡なども確認する必要があります。
「カビは原状回復の対象?借主負担になるケースと判断基準を解説」で詳しく解説しています。

Q.コンセント周辺が黒く焦げています。退去時まで使っていて大丈夫ですか?
そのまま使い続けないでください。
プラグやコンセントに焦げ、変色、異常な熱、焦げた臭いなどがある場合は、通常の電気ヤケとは別に安全確認が必要です。
Q.電気ヤケで壁一面の張替えを請求されました。払う必要がありますか?
請求されたというだけでは判断できません。
まず、黒ずみの原因が何なのか、なぜ借主負担なのか、どこまで張替えが必要なのかを確認してください。
まとめ|家電裏の黒ずみは「電気ヤケかどうか」を先に確認する
冷蔵庫やテレビを動かしたとき、
後ろの壁が黒くなっていると、
「自分が汚したから払わないといけない」
と思うかもしれません。
しかし、
通常使用によって生じたテレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ、いわゆる電気ヤケは、原則として通常損耗として考えます。
国土交通省のガイドラインでも貸主側の負担となる例として整理されています。
一方で、
油汚れ。
タバコのヤニ。
放置して拡大したカビ。
実際の焦げ。
などは同じ黒ずみでも判断が違います。
大切なのは、
黒いかどうか
ではなく、
なぜ黒くなったのか
を確認することです。
そして、黒ずみを見つけても、
慌てて強い洗剤でこすったり、
自己判断で壁紙を補修したりする必要はありません。
まず写真を残し、
原因。
範囲。
壁紙の状態。
契約内容。
請求理由。
を一つずつ確認してください。
また、
コンセントやプラグそのものに焦げ・異常発熱・異臭などがある場合は、原状回復より安全確認を優先してください。
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冷蔵庫・テレビ裏の黒ずみを理由にクロス張替え費用を請求され、見積書の確認方法が分からない方はこちらです。

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参考資料
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン Q&A」
- 国土交通省「賃貸人負担と賃借人負担の一例」
- e-Gov法令検索「民法」第621条
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「電源プラグ・電源コード・コンセントの事故」




