賃貸住宅のキッチンを使っていると、
「コンロ周りの油汚れが落ちない……」
「換気扇がかなり汚れているけど、退去するとき請求される?」
「キッチンの掃除って、どこまで自分でやればいいの?」
と不安になることがあります。
結論からいうと、キッチンの油汚れがあるだけで、必ず借主が原状回復費用を負担するわけではありません。
重要なのは、
「通常の清掃をしていたのか、それとも掃除・手入れを怠ったことで汚れが蓄積したのか」
という点です。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の清掃として換気扇やレンジ周りの油汚れの除去などを挙げています。一方で、清掃・手入れを怠ったことで台所の油汚れや換気扇等の油汚れ・すすが生じた場合は、借主負担となる考え方が示されています。
この記事では、
- 普通の油汚れならどう考える?
- どこから借主負担になる?
- 換気扇やコンロは?
- 退去前に何をすればいい?
- 請求されたらどう確認する?
という疑問を、現場目線も交えて解説します。
キッチンの油汚れは原状回復になる?
まず結論を簡単に整理します。
| 状態 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 普通に生活して発生した程度の汚れ | 通常損耗として扱われる可能性がある |
| 普段から清掃している | 借主負担にならない可能性が高い |
| 油汚れを長期間放置 | 借主負担になる可能性がある |
| 換気扇に油・すすが大量に蓄積 | 借主負担になる可能性がある |
| コンロ周辺をほとんど掃除していない | 借主負担になる可能性がある |
| 退去時の通常のハウスクリーニング | 原則として貸主負担とする考え方がある |
| 契約書にクリーニング特約がある | 特約の内容・有効性の確認が必要 |
ここで大切なのは、
「油汚れがあるか」ではなく「どの程度の汚れで、なぜそうなったのか」
を見ることです。
国土交通省も、通常の清掃をしている場合の専門業者による全体のハウスクリーニングは、次の入居者を確保するためのものとして貸主負担が妥当とする一方、清掃・手入れを怠って発生・拡大した油汚れなどは借主負担となる場合があると整理しています。
【画像イメージ】
- コンロ周りの軽い油汚れ
- 換気扇のフィルターの汚れ
- 油が固まっているキッチン
- 「通常の清掃」と「放置」の比較図
そもそも「原状回復って、入居したときの状態まで全部戻すこと?」と思っている方も多いと思います。賃貸の原状回復には基本的な考え方がありますので、まずはこちらの記事で確認してみてください。
「普通の油汚れ」と「借主負担になる油汚れ」の違い
ここが今回一番重要なところです。
キッチンは毎日料理をしていれば、当然のように油汚れが発生します。
そのため、
「油汚れが少しある=借主負担」
とは考えません。
問題になるのは、通常の清掃・手入れを怠ったことで、通常の使用による汚れを超える状態になった場合です。
国土交通省のガイドラインでも、台所の油汚れについて、
使用期間中の清掃・手入れが不十分で油汚れが蓄積している場合
は、通常の損耗を超える程度の汚れとなることが多い、という考え方が示されています。
つまり、
比較的問題になりにくいケース
- 普段から簡単な拭き掃除をしている
- 換気扇やレンジ周りを定期的に掃除している
- 使用による一般的な油汚れがある
一方、
借主負担になる可能性があるケース
- 長期間まったく掃除していない
- 油が固まって厚く付着している
- 換気扇に油やすすが大量に蓄積している
- 汚れを放置したことで通常の清掃だけでは落としにくくなっている
などです。
換気扇・レンジフードの油汚れは請求される?
キッチンの中でも、特に判断が分かれやすいのが換気扇やレンジフードです。
国土交通省のガイドラインでは、
「ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす」
について、借主が清掃・手入れを怠った結果として汚損が生じた場合は、借主負担となる考え方が示されています。
ただし、
「換気扇が汚れている」
というだけでは判断できません。
例えば、
5年間料理をして生活してきた換気扇に多少の汚れがある
ケースと、
長期間まったく掃除せず、油が固着している
ケースでは、同じ「換気扇の汚れ」でも意味が違います。
職人目線で見るポイント
現場で清掃前のキッチンを見る場合、私なら単純に「汚い・きれい」だけでは判断しません。
例えば、
- 油が薄く付着している程度なのか
- 油が固まっているのか
- 換気扇内部まで油が回っているのか
- コンロ周辺に焦げ付きがあるのか
- 長期間放置されたような状態なのか
などを見ています。
特に油が固まって厚くなっている状態は、通常の使用による軽い汚れとは印象がかなり違います。
例えば、
「実際の退去現場で、レンジフードを外してみるとぱっと見の見た目は綺麗でしが、換気扇カバーの内側や換気扇本体の内側は油だらけだった」なんてこともありました。
こういった清掃は換気扇カバーを外したり、ちょっと手間のかかる掃除なので頻繁に掃除するのは大変ですよね。
退去時のキッチン清掃はどこまでやればいい?
退去前になると、
「プロのハウスクリーニング並みに掃除しないといけない?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、そこまで考える必要はありません。
国土交通省のガイドラインでは、通常の清掃として、
- ゴミの撤去
- 掃き掃除
- 拭き掃除
- 水回りの清掃
- 換気扇の清掃
- レンジ周りの油汚れの除去
などが挙げられています。
つまり、
「退去前に何もしなくていい」というわけでもなければ、「業者レベルまでピカピカにする」という意味でもありません。
普段から適切に掃除しておくことが大切です。
キッチン以外にも、退去時に「これは借主負担になるの?」と迷いやすい項目があります。原状回復で請求されやすい項目をまとめて確認したい方はこちらの記事も参考にしてください。
→ 「原状回復で請求されやすい項目一覧」
キッチンの油汚れを退去前に掃除するときのポイント
退去前に掃除するのであれば、無理に特殊な洗剤を使う必要はありません。
まずは、
① コンロ周辺を拭く
油が固まっている場合は、いきなり強い洗剤を使うより、汚れを柔らかくしてから落とすのがベストです。
② 換気扇・レンジフードを確認する
フィルターなど、契約や設備の仕様上、入居者が通常行う範囲の清掃を確認します。
③ 壁やキッチンパネルの油汚れも確認する
コンロ周辺の壁やキッチンパネルにも油が飛んでいることがあります。
④ 無理な分解清掃はしない
換気扇などを無理に分解すると、故障や破損につながる可能性があります。
「自分で掃除できる範囲」と「専門業者に任せる範囲」を分けることも大切です。
キッチンの油汚れでやってはいけないNG行動
NG① 退去直前まで完全に放置する
「退去するときにまとめて掃除すればいい」
と考えると、油汚れが固まって落としにくくなることがあります。
キッチンの油汚れは、普段の小まめな清掃が一番ラクです。
NG② 強い洗剤で無理に落とす
汚れを落とそうとして強い洗剤や研磨剤を使うと、素材を傷める場合があります。
特に、
- キッチンパネル
- 塗装面
- 金属部分
- 樹脂部品
などは、素材によって適した清掃方法が異なります。
NG③ 換気扇を無理に分解する
「せっかくだから内部まで全部きれいにしよう」
と無理に分解するのはおすすめしません。
破損させてしまえば、もともとの油汚れより大きな問題になる可能性があります。
(カバーを外して掃除するなどの基本的な清掃にとどめ無理な分解は避けましょう)
NG④ 「ガイドラインに書いてあるから絶対払わない」と決めつける
これも注意が必要です。
国土交通省のガイドラインは、原状回復トラブルについての一般的な基準です。
実際には、**賃貸借契約書の内容や特約、汚れの程度などによって判断が変わります。**国土交通省も、クリーニング特約については、その内容・範囲や説明の有無、費用の妥当性などを踏まえて有効性が判断されるとしています。
退去時にキッチンの油汚れを請求されたら確認すること
もし、
「キッチン清掃費○万円」
「換気扇清掃費○万円」
などの費用を請求されたら、まず確認したいのは、
「何のための費用なのか?」
です。
例えば、
確認① 通常のハウスクリーニングなのか?
通常の清掃をしていたにもかかわらず、次の入居者のために行う専門業者による全体クリーニングなのか。
確認② 借主の清掃不足によるものなのか?
それとも、油汚れが著しく蓄積していたための追加清掃なのか。
確認③ 契約書に特約があるか?
退去時クリーニング費用について特約があれば、その内容を確認します。
国土交通省の相談事例でも、通常の清掃をしている場合の全体クリーニングと、借主の手入れ不足による油汚れなどは分けて考える必要があるとされています。
キッチンの清掃費を含め、退去費用全体が「高すぎるのでは?」と感じた場合は、慌てて支払う前に見積もりの内訳を確認しましょう。退去費用が高いと感じたときの確認ポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。
→ 「退去費用が高すぎると感じたら?」
職人目線|キッチンの油汚れは「汚れているか」より「放置したか」を見る
内装や原状回復の現場でキッチンを見るとき、私は「汚れているか?・汚れていないか?」は問題視していませんし、実は汚れている場合も多いんです。
(逆にピカピカだと感動さえ覚えます)
キッチンは毎日使う場所なので、多少の油汚れが付くのは当然ですからね。
大切なのは、
「その汚れが通常の生活で発生する範囲なのか、それとも掃除をせずに長期間放置した結果なのか」
ということは必ず考えます。
例えば、コンロ周辺を普段から拭いているキッチンと、油が何層にも固まっているキッチンでは、同じ「油汚れ」でも状態はまったく違います。
現場では、汚れの範囲や固着具合を見たり、キッチン以外の使用状況も見て、ある程度「普段から手入れされていたのか」ということが分かる場合がほとんどです。
もちろん、見た目だけで使用状況を断定することはできません。
だからこそ、
「これは借主が悪い」と最初から決めつけるのではなく、どのような状態になっているのかを確認することが最優先で考えないといけないと思っています。
例として、
「なにを使用したらこんなに変色するんだ?」
と、思うほど変色したレンジフードを見たことがあります。特にアルコールやシンナーなど、用途の違う使い方などは注意が必要です。
また、これは清掃を怠っていたとは違うパターンですが、
コンロの「つまみ」が消しゴムに代わっていた!
火力調節のつまみが外れて紛失したのでしょうね、外れてしまったのは仕方のないこととしても
すぐに拾って直すか、管理会社(大家さん)に相談していれば消しゴムで代用することは無かったかなと思います。
同じつまみを取り寄せた。という事例でした。
キッチン周辺では、油汚れだけでなく湿気によるカビが問題になることもあります。カビについても「どこまでが借主負担なのか」を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
→ 「カビは原状回復の対象?」
まとめ|キッチンの油汚れは「通常の清掃をしていたか」が判断ポイント
賃貸住宅のキッチンに油汚れがあるからといって、必ず原状回復費用を請求されるわけではありません。
重要なのは、
- 普段から清掃していたか
- 油汚れを長期間放置していないか
- 換気扇やコンロ周辺に著しい汚れがないか
- 通常の清掃で対応できる状態なのか
- 契約書にクリーニング特約があるか
などを確認することです。
国土交通省のガイドラインでは、通常の清掃をしている場合の専門業者による全体クリーニングは貸主負担とする考え方が示される一方、清掃・手入れを怠ったことで発生・拡大した台所の油汚れや換気扇等の油汚れ・すすは、借主負担となる場合があるとされています。
つまり、
「油汚れがある=借主負担」ではなく、「どの程度の汚れで、なぜその状態になったのか」が重要です。
退去前に気になる場合は、まずできる範囲で通常の清掃をしておき、退去時に費用を請求された場合は、その内容と根拠を確認しましょう。
「自分が全部払うのかな?」
と最初から不安になる必要はありません。
一方で、明らかな掃除不足によって汚れを放置していたのであれば、借主側の負担になる可能性もあります。
貸主・借主のどちらかを一方的に責めるのではなく、汚れの原因と状態を確認して判断する。
これが、キッチンの油汚れをめぐるトラブルを防ぐ基本的な考え方です。
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