退去時のハウスクリーニング費用は借主負担?
賃貸住宅を退去するときに、
「ハウスクリーニング代は借主が払うものなの?」
と疑問に思う方は多いと思います。
特に、
「退去費用としてハウスクリーニング代○万円を請求された」
となると、
「これって普通なの?」
と不安になりますよね。
まず結論からいうと、
退去時のハウスクリーニング費用が、必ず借主負担になるわけではありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の清掃をしている場合の全体のハウスクリーニングは、貸主負担となる例が示されています。
一方で、
- 契約書にハウスクリーニング特約がある
- 借主の清掃・手入れ不足によって汚れがひどくなっている
などの場合は、借主負担となる可能性があります。
つまり、
「ハウスクリーニング=借主負担」
ではなく、
「契約内容」や「実際の汚れ・清掃状況」によって変わってくる
ということです。
今回のお話は、
- ハウスクリーニング費用は誰が負担するのか
- 自分で掃除していれば払わなくていいのか
- 契約書に特約があった場合はどう考えるのか
- 高額なクリーニング費用を請求されたらどうするのか
など、原状回復のルールと現場目線から分かりやすく解説します。
そもそも「原状回復」と「ハウスクリーニング」は同じ?
ここは最初に整理しておきましょう。
原状回復とハウスクリーニングは、同じ意味ではありません。
原状回復とは、借主の故意・過失や通常の使用を超える損耗などについて、契約上の義務に応じて修繕することをいいます。
一方、ハウスクリーニングは、退去後の部屋を清掃する作業です。
例えば、
- 水回りの清掃
- キッチンの清掃
- 浴室の清掃
- トイレの清掃
- 床や室内の清掃
などがあります。
ただし、「どのような清掃費用を誰が負担するか」は、契約内容によって変わる場合があります。
「そもそも原状回復って何?」「退去時は全部きれいにして返す必要があるの?」という方は、まず原状回復の基本から確認しておくと分かりやすいです。
賃貸の原状回復とは?通常損耗・経年変化と退去費用の基本ルールを解説賃貸の原状回復とは?入居時の新品状態に戻すことではありません。民法621条と国交省ガイドラインをもとに、通常損耗・経年変化・故意過失の違い、借主負担、6年ルール、特約、退去費用の確認方法を現場目線で解説します。
ハウスクリーニング費用は原則として借主負担なの?
ここが一番知りたいところだと思います。
結論としては、
通常の清掃を行っている場合、ハウスクリーニング費用を借主が必ず負担するわけではありません。
国土交通省のガイドラインでは、通常の清掃をしている場合の全体のハウスクリーニングについて、貸主負担の例として整理されています。
例えば、
- 掃除機をかける
- 水回りを通常の範囲で掃除する
- ゴミを残さない
- 浴室やトイレなどを普段から清掃する
といった、一般的な清掃・手入れをしていた場合がこれにあたります。
ただし、
「自分で掃除しているのだから絶対にクリーニング費用を払わなくていい」
という意味でもありません。
契約書に特約がある場合は、その内容を確認する必要があります。
契約書に「退去時クリーニング費用は借主負担」と書いてあったら?
ここは非常に重要です。
賃貸借契約には、
「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担とする」
といった特約が設けられている場合があります。
国民生活センターも、契約時に「ハウスクリーニング費用は全額借主負担」などの退去時費用に関する特約を確認するよう案内しています。
そのため、
「ガイドラインでは貸主負担だから、特約があっても絶対に払わない」
と決めつけるのはおすすめできません。
まずは、
- 契約書
- 重要事項説明書
- 特約事項
- 入居時に渡された説明書類
などを確認しましょう。
特約で確認したいポイント
例えば、
「退去時にハウスクリーニング費用として○万円を借主が負担する」
と書いてある場合、
① 金額が書かれているか
「ハウスクリーニング費用は借主負担」
だけなのか、
「退去時に○○円を負担」
など具体的に書かれているのか確認しましょう。
② いつ負担することになっているか
入居時なのか、退去時なのか。
③ 何の費用なのか
ハウスクリーニング費用なのか、
それとは別に、
- エアコンクリーニング
- 特別清掃
- 修繕費
などが加算されていないか確認しましょう。
「自分で掃除したらハウスクリーニング代は払わなくていい?」
これも非常に多い疑問だと思います。
例えば、
「退去前に自分でピカピカに掃除したから、クリーニング費用は払わなくていいですよね?」
と思うかもしれません。
しかし、契約書で借主が一定のクリーニング費用を負担する特約に明確に同意している場合は、自分で掃除したからといって、その費用負担が免除されるとは限りません。
逆に、特約がなく、通常の清掃をしていたにもかかわらず、単に退去後の通常清掃費用を借主に請求しているのであれば、ガイドライン上の考え方を確認する余地があります。
つまり、
「掃除した・していない」だけでは判断できません。
ここがポイントです。
借主負担になる可能性があるのはどんなケース?
例えば、
ケース① 清掃・手入れを怠って汚れがひどくなった
長期間ほとんど掃除をせず、
- カビ
- 水垢
- 油汚れ
- 尿石
- その他の汚れ
などが通常の使用による範囲を超えて蓄積している場合です。
このような場合は、借主の清掃・手入れ不足による汚損として、借主負担になる可能性があります。
ケース② 特約によってクリーニング費用を負担することになっている
契約時に、
「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」
という特約が明確に合意されている場合です。
この場合は、まず特約の内容を確認しましょう。
ケース③ 通常の清掃では対応できないほど汚れている
例えば、
「普通に使っていたら少し汚れた」
という状態と、
「長期間掃除せず、汚れが固着・蓄積している」
という状態では意味が違います。
キッチンの油汚れについても、「普通に料理していて付いた汚れ」と「長期間放置して固着した汚れ」では考え方が変わります。詳しくはこちらの記事で解説しています。
キッチンの油汚れは原状回復になる?賃貸の退去費用で借主負担になるケースと判断基準賃貸のキッチンや換気扇の油汚れは退去時に原状回復費用として請求される?国土交通省のガイドラインをもとに、通常の清掃と借主の手入れ不足による油汚れの違い、借主負担になるケース、退去前の確認ポイントを現場経験のある職人が解説します。
逆に「普通に生活していただけ」で発生する汚れは?
ここは誤解しないようにしておきたいところです。
賃貸住宅で生活していれば、多少の汚れや使用感はどうしても発生します。
例えば、
- 日常生活による多少の汚れ
- 年数経過による劣化
- 通常使用による使用感
などです。
国民生活センターも、年月の経過による損耗や、普通の使い方をしていても発生する汚れ・キズなどについては、原則として借主が費用を負担する必要はないと案内しています。
だからこそ、
「少し汚れている=全部借主負担」
と考える必要はありません。
退去前に自分で掃除したほうがいい?
私は、普段の掃除をする程度で十分だと思っています。
ここで無理をする必要はありません。
例えば、
- ゴミを残さない
- 掃除機をかける
- 水回りを掃除する
- 油汚れを可能な範囲で落とす
- 浴室のカビや水垢を可能な範囲で掃除する
- 排水口を掃除する
などです。
ただし、
「退去費用を安くしたいから、徹底的に掃除しなければ」
と考えすぎる必要も無いと思っています。
ハウスクリーニングでやってはいけないNG行動
NG① 強い洗剤を使いすぎる
「プロのようにピカピカにしたい」
と考えて、強力な洗剤を大量に使うのはおすすめしません。
素材を傷めたり、変色させたりする可能性があります。
NG② 分解清掃に挑戦する
これは特に注意してください。
換気扇や浴室設備などを、
「自分で分解して掃除してみよう」
と思い、知識がないままの分解清掃は避けたほうが安全です。
元に戻せなくなったり、設備を壊してしまったりすれば、掃除のために始めたはずの作業が、別の修繕問題になってしまう可能性があります。
「汚れを落とそうとして、かえって設備を傷めてしまう」というケースもあります。実際の現場で私が経験した事例についてはこちらの記事で紹介しています。
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職人目線|ハウスクリーニングは「どこまで綺麗にするか」だけではない
私は30年以上、内装や修繕の現場に携わってきましたが、ハウスクリーニング専門の作業をしてきたわけではありません。
そのため、ここではハウスクリーニング業者さんの専門的な作業方法ではなく、退去後の修繕現場を見る立場から感じることをお話しします。
退去後の部屋を見るとき、
「汚れているからダメ」
という単純な判断で、その後の作業内容を決めているわけではありません。
例えば、
その汚れは普通に生活していて発生するものなのか?
長期間の放置によってひどくなったものなのか?
清掃で対応できるのか?
設備そのものを傷めてしまっていないか?
など、いろいろな角度から原因や対応を考えています。
つまり、「汚れているかどうかではなく、なぜその状態になったのかを見ている」
という考え方をしています。
「自分で掃除したほうがいい?」と不安になったら
退去の日が近づいてくると、
「もっと掃除しないと請求されるかも……」
と不安になる方もいると思います。
でも、必要以上に怖がらなくて大丈夫です。
普段から普通に掃除・手入れをしているのであれば、まずはその範囲でできる清掃をしておきましょう。
無理にプロと同じレベルを目指す必要はありません。
「汚れを落とすために設備を傷めてしまう」
ということのほうがリスクですし、避けたいところです。
退去時にハウスクリーニング費用を請求されたら?
もし退去時に、
「ハウスクリーニング費用として○万円です」
と言われても、慌てて判断しないようにしましょう。
まず確認したいのは、
① 契約書に特約があるか
「退去時ハウスクリーニング費用は借主負担」などの記載がないか確認しておきましょう。
② 金額はいくらなのか
契約書に金額が書かれている場合は、その金額と照らし合わせましょう。
③ 何の費用なのか
通常のハウスクリーニングなのか、
それとも、
- 特別清掃
- カビ除去
- 油汚れ除去
- エアコンクリーニング
- 修繕
など、別の費用が含まれているのか確認しましょう。
④ 明細があるか
「クリーニング一式○万円」だけでは分からない場合は、
「この費用は具体的に何の作業に対するものですか?」
と確認してみましょう。
国民生活センターも、納得できない費用を請求された場合は、貸主側に費用の明細等の説明を求め、費用負担について話し合うよう案内しています。
ハウスクリーニング費用を含め、退去費用全体を見て「ちょっと高すぎるのでは?」と感じた場合は、慌てて判断しないことが大切です。見積書を確認するときのポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。
退去費用が高すぎると感じたら?請求内容の確認方法と納得できないときの対処法【賃貸】退去費用が高すぎると感じたら何を確認する?借主負担の原因、補修範囲、6年ルールなどの経過年数、見積書の内訳・単価・特約を確認する順番と、納得できない場合の対処法を現場目線で解説します。
「ハウスクリーニング費用が高い=不当」とは限らない
ここも大切です。
例えば、
「自分の感覚では高い」
というだけで、
「絶対に払わなくていい」
と決めつけるのは避けましょう。
実際の負担は、
- 契約内容
- 特約
- 清掃・手入れの状況
- 汚れの程度
- どのような作業が必要なのか
- 請求額
などを総合的に確認する必要があります。
逆に、
「管理会社から請求されたから絶対に払わなければならない」
ということでもありません。
疑問がある場合は、まず明細や根拠を確認しましょう。
まとめ|ハウスクリーニング費用は「契約書」と「実際の状態」を確認
退去時のハウスクリーニング費用について、
「借主が必ず払う」
というルールが一律にあるわけではありません。
国土交通省のガイドラインでは、日常的に清掃を行っている場合、全体的なハウスクリーニングは貸主が負担する例とされています。
一方で、
契約書にハウスクリーニング費用についての特約がある場合は、その内容を確認する必要があります。
また、借主の清掃・手入れ不足によって通常の使用を超える汚れが生じている場合は、借主負担になる可能性があります。
ポイントを整理すると、
- ハウスクリーニング費用=必ず借主負担ではない
- 通常の清掃をしている場合は貸主負担とする考え方がある
- 契約書の特約は必ず確認する
- 清掃不足によるひどい汚れは借主負担になる可能性がある
- 請求されたら費用の内訳を確認する
- 疑問があれば、貸主・管理会社に説明を求める
ということです。
そして何より、
「退去するから、家中をプロ並みに掃除しなければいけない」
と考える必要はありません。
普段からできる範囲で清掃・手入れをして、退去前には通常の掃除をしておく。
それでも請求された場合は、
「この費用は何のためのものなのか?」
「契約書にはどのように書かれているのか?」
を確認する。
この順番で、落ち着いて冷静に判断しましょう。

最後に|家守タクから
退去費用について調べていると、
「これは払うの?」
「これも借主負担?」
と、どんどん不安になってしまうこともあるかと思います。
でも、原状回復は**「汚れているから全部借主負担」ではありません。**
大切なのは、
原因・程度・契約内容を一つずつ確認すること。
私も長年修繕の現場を見てきましたが、同じ「汚れ」や「傷」に見えても、その原因によって判断や対応はさまざまです。
分からないまま不安になるのではなく、
「なぜこの費用が発生しているのか?」
を確認してみてください。
必要な費用はきちんと負担する。
でも、分からない費用まで「退去だから仕方ない」と決めつけない。
その両方が大切だと思っています。





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